立ち回り次第で最強の布陣となる「両建て」。
極めて特殊なポジションの持ち方だからこそ、誤った情報や誤解しやすい理論が数多く出回っている現状です。
その間違いを解き、私の考える両建ての生かし方をお伝えします。
人によって意見の分かれやすいテーマですが、分かりやすく理にかなった話を共有しますから、最後まで読んだら確実に納得できるでしょう。
目次
両建てとは
最初に申し上げると、「両建て」は手法ではありません。
両建ては、FXにおける同一通貨の「買いポジション」「売りポジション」その両方エントリーする事を意味します。
他の通貨で買い売り両方をエントリーするのは両建てに該当しません。
ドル円であれば、買いポジションと売りポジションを保有する形になります。しかし、どのFX会社で取引していても等しい注文数を同時に2つ保有数ことになりますから、リスクも倍になる事を知っておきましょう。
つまり、仮に両方のポジションで損失を出した場合、本来の倍「損失」が膨らむことを忘れてはいけません。
両建ては禁止されている?
禁止はされているFX会社もありますが、概ね推奨はしていないけど出来るのが正解です。
あくまで、FX業者は両建てに対してネガティブだと認識しておきましょう。
私は、FX会社の従業員でもなければ、機関投資家でもない個人トレーダーです。
その立場を踏まえて見解の述べると、両建ては有効な相場において使い方次第で効率よく利益を上げる事が出来ます。
一方で、前述したような両建て非推奨のFX会社ではスワップ差異や手数料の過剰負担の観点で経済的に非合理であるとしています。
「両建て必勝法」の真実
理論上、両建ては同時に同じ数のロットをエントリーすれば、証拠金維持率は変動せず無期限にポジションを保有する事が出来ます。
その事から、多くのメディアでは両建てを上級者向けとした上で、絶対に負けない方法だと解説しているのを頻繁に見ます。
確かに理論上は、両建ては絶対に負けません。しかし、その思考は非現実的。
- 一寸の狂いもないタイミングで決済
- 相当な資金力
何故なら、その理論通りに負けないトレードをするには2つの条件を完璧に満たす必要がありからです。
この条件が如何に難易度が高く、現実性に欠けるかをお話ししましょう。
- 一寸の狂いもないタイミングで決済
完璧なタイミングで決済とは、エントリーした価格より上で買いポジション、エントリーした価格より下で売りポジションを決済しなければなりません。
図で言う所の緑と青のゾーンがそうです。
さらに、そもそも両建てでトレードする期間において、「必ず通る価格」で両建てしなければなりません。
つまり、買いと売りの決済を行うのですから、その期間内の中間領域を算出してエントリーする必要があるのです。
- 相当な資金力
完璧な決済タイミングで、最初に天井圏、底値圏で決済できなければ期間内のボラティリティに耐えるほどの資金力が必要になります。
もとい、FXでは証拠金維持率をロスカット水準以上に確保する必要があるのです。
FXでは強制ロスカットに注意!適切なリスク管理が成功のコツ。
両建てはエントリーした段階では、証拠金維持率は変動しませんが、片方のポジションを決済した段階では証拠金維持率が著しく低下します。
例えば、天井圏で買いエントリーを決済した段階では、これ以上価格が上昇しなければ売りポジションの含み損は増えず、証拠金維持率は下がりません。
しかし、天井圏での決済に失敗し、売りポジションに対して値動きが逆行すれば証拠金維持率は著しく低下し、強制ロスカットになってしまいます。
直近のサイクルでボラティリティをみると、上の図では299.8ピップスですから、それに耐える事ができる証拠金(資金力)が必要です。
- 1万通貨の口座で両建て、1ロット=証拠金4万円
- 両建てなので少なくとも8万円必要
- ポジションの最大利益は12,000円/最大損失は12,000円×2つ分
- 保有期間中の両方のスワップポイントが引かれます
リスクと期待値の比率は五分五分、さらに保有期間中のスワップポイントを支払う必要があります。
仮に、トレード期間を設定せず無期限に持ち続けた場合は、利益も損失も等倍で大きく、証拠金もさらに大きな金額が必要です。
これらが、一般的に言われている「両建て必勝法の真実」。
理論上は負けないが、それをルール通りに執行する難易度、執行できる資金力共に実現するのはほぼ不可能と言えるでしょう。
実践でメリットになる、両建ての本質
- 損失を抱えた状態で利益を確保できる
- ポジションを持ったまま証拠金を増やすことができる
- 異なる時間軸でトレードを並行して行える
両建てのメリットはこの3つだと私は考えています。
相反する方向性のポジションを持つのが両建てですから、少なくとも同時にエントリーした場合は相場に一定のボラティリティがある限り、片方は「含み益」一方は「含み損」の状態になります。
どちらか一方を、利益の出ている状態で決済すれば、損失を抱えた状態で利益を確保できます。
当たり前の事を言っていると思うでしょう。
しかし、FXにおいて損失を抱えたまま利益を得られるというのは、大きなメリットとして作用します。なぜなら、利益確定=証拠金が増えるからです。
証拠金が増えるという事は、証拠金維持率が上がり、ひいては強制ロスカット水準が遠くなりポジションを大きくすることも可能に。
そして、これらのメリットは異なる時間軸を並行して行う時に使える優位性があります。
両建てを使った戦法。私はこう使います。
両建てを使った手法と言えば大げさですが、私が両建てトレード使うのはどういったシーンか?それを参考程度に共有します。
前述したメリットを最大限に利用できるのは、「スイングトレード」と「デイ・スキャルピング」のトレードを同時にする時というのが私の考えです。
例えば、長期的な目線で売りポジションを保有している状況。しかし、短期的には大きめの反発があると予想できるといったケースで長期ポジションを保有したまま、買いエントリーをする立ち回りです。
ちなみに、同時に同じロット数での両建ては考えません。その理由は後述します。
この戦法では、上手くシナリオ通りにトレードが成立すれば短期的なトレードで利益を確保し、その増えた証拠金でベストな戻り売り、押し目買いが可能です。
一方で、相場環境を的確に分析できておらず、自身の想定したシナリオと逆行すれば、損失に加え、長期的に保有したいポジションの維持が困難になります。
失敗しないためには、長期的な相場環境と短期的な期待値を想定するスキルが必須です。
両建てトレードの分析術
具体的に、前述した両建ての使える相場環境についてお話ししたいと思います。
こちらは、ユーロ円の週足チャートです。
- 各安値を持合い相場を作り、順当に切り下げている
- 高値も何度も天井圏を固め、上値の重さが意識できる
長期的な下降トレンドが明らかに見て取れるのが、この週足チャートで理解できるでしょう。
この時点で、私であれば「直近の値動き」や「各高安値」での長期、中期での戻り売りを考えて時間軸の長いトレードシナリオを考えます。
しかし、長期的な目線であれば下降トレンドですが、短期的には節目が明確な「反発」の動きを見つける事ができ、上のチャートは週足ですから日足以下の時間軸においては「短期的な上昇トレンド」が発生中です。
これを利益機会にとして、両建てトレードを考えるのが私が実践で使う戦法であり、前提の相場環境となります。
私の両建てトレード、実際の立ち回り
具体的に私が、このユーロ円チャートのどこで両建てを戦術的に取り入れるか解説しましょう。
- 長期目線でディセンディングトライアングルの成立を予想
- 短期目線では、青色ゾーンで買われる事も視野に
- 下降トレンドは確定しておらず、赤線までは安値を更新していない
私がトレードする場合、上記のシナリオ構築と相場環境の認識をします。
つまりは、長期的な下降トレンドの転換を予想し売りエントリーをするも、直近の上昇トレンドにおける「押し目買い」を考えるトレーダーに付いていく考えです。
実際に「両建ての買い」をエントリーするのはレジスタンスゾーン(青色)であり、両建て以前にディセンディングトライアングルと予想する高値切り下げポイントで売りエントリーをします。
「長期的な目線」と「短期的な目線」その両方を加味する軸の考え方を共有しました。しかし、同時に異なる方向性を持つ事になる戦法ですから、難しく感じましたか?実際に小難しいトレードです。
モヤがかかった状態から、実践で使えるように詳しくお伝えしていきます。
混乱するのは、同時に各ポジションを考えるから。売りと買いを個別に思考する事がコツです。
【長期シナリオ】
前提として下降トレンドの転換を予想している、安値を更新するまでは不確定のため複数のシナリオを視野に入れる。
- 下値を抜け、ディセンディングトライアングルを形成する
- 上昇トレンドの勢いもあるため、ダブルトップになる可能性
- 明確に高値を切り上げればロスカット、高値で滞留するならロットを増やす
ユーロ円の値動きはボラティリティが激しく、それ以外にも特有の性質があります。(通貨の特性については機会があればお話ししたいですね)
私は、ボラティリティの大きい通貨で両建てをする機会が多いです。
ともかく上昇トレンドに対する「逆張り」が長期シナリオですから、買い側が優勢である以上は、再び高値にトライする展開を視野に入れます。
そのため、一つ注意点ですが長期的な目線のポジションかつ、高値を試す可能性が高いエントリーでは普段よりロットを押えてエントリーします。
つまり、より高い位置でエントリーチャンスが伺えるからこそ「フルスイングのエントリー」を避けるという事です。余力を残し、より優秀なポイントでロットを大きくするのです。
高値を抜けたらロスカットですから、損切り幅も縮小しリスクリワード良く立ち回る事を意識しましょう。
【短期シナリオ】
左側は力強い上昇トレンド継続中。下がった水準、何度も買われた水準では短期的に買われる。
- 何週間も買い支えられた領域で買いエントリー(両建て)
- 上昇トレンドの継続とみている買い側の、押し目買いに付いていく
- 自身のメインシナリオは「転換」なので、直近の高値(週足以下)で利益を確定する
メインシナリオは、長期的な転換点です。
両建てする際は、最終的に相場がどちらの方向に傾くのか?目的を一貫しておかなければ、片方のポジションを決済する事ができず、無限に損失が膨らんでしまいます。
短期シナリオですから、少なくとも長期シナリオより早い段階で決済する前提で考えましょう。
さて、長らく相場を支えてきた上昇トレンドに対して「順張り」していくのが、短期シナリオの根本的な軸です。
ですから、短期的に作用している、レジスタンスゾーンにレートが来た段階でエントリーを考えます。
一方で、長期的な転換点を並行して狙っていますから例のユーロ円チャートでは高値付近で決済します。
また、この段階で途転(買い売りを切り替え)して売りポジションを大きくします。
本質的には、この売りポジションをサイズアップする事が要です。
より高い値位置で売ることで、損益基準が近くなる
短期シナリオで得た利益は、長期シナリオに対する増資として考えましょう。
売りエントリーを増やすことで、最初にエントリーした長期ポジションと新規の売りで合算し、含み損から含み益になる価格が近くなります。
つまり、より利益が大きく、利益に変化するのも早くなるのです。
これが、両建てによって上手く立ち回り、最終的な利益額を最大化する私なりの戦い方。
まとめ 両建てはマスターすれば最強の武器に
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回は、「【FXで両建て】誤情報が多すぎる。本当の両建てのメリット。」のテーマでお送りさせていただきました!
- 両建て必勝法の問題
- 本当の両建てのメリット
- 実践での私なりの立ち回り
この3つにフォーカスしてお届けしました。しっかり理解していただけましたか?
両建ては確かに混乱しがち。私もパッと見で証拠金維持率に余裕ができたように錯覚し、口座を開設した初心者の時期では、維持率が下がり切迫してきたら「両建て」→「大敗」の経験があります。それも、両建てが無敵の手法に聞こえるメディアを変に認識していたから。
今となっては、なぜ深く考えて取り入れなかったのか自身に対する呆れすら感じます。記事を読んで頂いたアナタは、失敗経験にならないよう、今回の内容を役立てていただけたら嬉しいです。